こんにちは!船戸クリニック副院長の船戸 優佑と申します。
2025年4月から今までいた大学病院から、この船戸クリニックへ常勤として勤務することとなりました。僕の専門である循環器内科の外来も増えますので、心疾患や、胸痛や呼吸で心配されている方はぜひ僕の外来にご相談頂ければ幸いです。
さて、それに伴い今回の通信では、心疾患について、その心疾患の中でも代表である心不全についてお話させて頂きたいと思いますのでよろしくお願いします。
では、まず心臓という臓器についてお話させて頂きたいと思います。
心臓という臓器の役割を言いますと、非常にシンプルな臓器で、全身に血流を巡らせるポンプの役割をしている臓器です。しかし、とても大切な臓器であり、全細胞に酸素と栄養を届ける為1年365日、1日10万回休む事なく拍動を続けています。そんな、ブラック企業も真っ青なハードワークをしている心臓ちゃん、少しは働き方改革で休ませてあげたい気もしますが、もし心臓が休んでしまえば10数秒で意識はなくなり、4分で私たちの体は壊死が始まってしまいます。そんなシンプルながら、とても大切な臓器なんですね。
次に、心不全がどのような病気かをお話したいと思います。
心不全とは、心臓が何かしらの原因で機能が落ちてしまい、全身の血液の循環が悪くなってしまっている状態を言います。具体的に言うと、心疾患と言っても不整脈、心筋梗塞、心筋症など様々な疾患がありますが、それら病気があっても全身の血液循環には問題がない方もみえます。ただ、心機能は寿命と共に、心疾患や生活習慣病などがあればさらに早く悪くなっていきますので、どこかで血液循環に問題がでてきて心不全が発症するということになります。つまり心不全とはあらゆる心疾患の終末像という事が言えます。

続いて、心不全の症状についてお話していきます。
心不全が発症するとどのような症状がでてくるのでしょうか。
心機能が落ちてくると、血液が渋滞を起こしってしまう「溢水」と全身に血液が行き届かない「低拍出」という二つの問題がでてきます。

溢水状態では、臓器に水が溜まり症状を引き起こします。特に症状を引き起こしやすい臓器としては、肺と足に水が溜まりやすいです。肺は血流の順番では心臓の前の臓器ですし、足は重力の関係もあって水が溜まりやすいです。肺に水が溜まれば、呼吸が苦しくなり、少し動いただけでいつもより息切れを感じてしまったり、酷くなると陸の上で溺れたような状態になってしまい、放っておくとそのまま最後の時となってしまいます。足の浮腫は、初めは靴下の跡がつくぐらいですが、ひどくなると像の足のようにパンパンになってしまう人もいます。
もう一つの低拍出の症状としては、全身に血流が十分に行っていない為、倦怠感、食欲低下などが出現し、低血圧の状態が続きます。この低血圧状態ですが、かなり心機能低下が進んだ重症心不全で出現してきます。これは、人間の体は進化の過程で、低拍出には強いですが、溢水には弱いせいですね。なので、心不全の症状としては溢水症状から感じ始める事が多いと思います。
これらの症状は心不全が重症化すると同時に、症状は頻回に重くなっていきます。最後には、ベッドの上で動くことさえ呼吸が苦しくてできなくなってしまう方も見えます。
そして、お伝えしなくていけない心不全の怖い所は急激に悪くなる事がある事です。数分前まで、いつも通り元気であったのに、急に呼吸が苦しくなったり、冷や汗、倦怠感が出てきてそのまま命が危ない状態になってしまう事があります。心不全と言われている方は呼吸苦や冷や汗、倦怠感が出てきて15分以上治らない時は救急要請を考えましょう。
さらに、もう一つお伝えしておかなくてはいけないのが、心臓はとても我慢強い臓器であり、症状が出てきた時それは氷山の一角であり、心機能の低下はかなり進行してしまっているという事です。ですから、心不全は予防がとても大切です。また、心不全傾向があるかは病院の定期検査でわかることもあります。特に生活習慣がある方は心不全になりやすいので、定期的に病院でチェックを受けて、上記症状が出現してきたら早めに受診、相談をしましょう。

さて、心不全のご病気がどのような病気が少し分かって頂けたかと思います。
次は心不全の頻度やどれだけ重症な病気なのかを、数字を交えてお話できたらと思います。
まず、これを読んで頂いている中で自分は心臓の病気で亡くなるだろうなと思っている方はどのぐらいいるでしょうか。おそらく多くの方は、自分は心疾患とは無縁だと思っていると思います。
しかし、全国の死因の割合をみると、なんと悪性新生物、がんに次ぐ2位を占めております。

さらに心不全はどんどん増えていると言われております。

上の図を見ると、2030年ぐらいまではどんどん心不全患者様が増えていると言われております。そこから頭打ちになっているように見えますが、これは日本人全体の人口が減っている
せいでそう見えるだけであり、心不全の割合は増え続けております。この爆発的な心不全患者の増加を、医師の間では「心不全パンデミック」と言ったりします。
心不全が思ったより身近な疾患である事がわかって頂けたのではないかと思います。そんな心不全ですが、とても難治性で致死率も高い疾患と言われております。

上の図は心不全による死亡率を示しています。その中で、グラフの1年死亡率を注目してください。この1年死亡率とは、心不全で入院してから1年後の死亡率です。なんと、20%前後もあるんですね。とても高い死亡率で大変怖い病気という事がわかります。また、横軸は時間軸になるんですが、年月が経ち、いろんな治療法がで続けているのにも関わらず全然死亡率は改善していないんですね。これは、心不全患者さんの高齢化により治療がより効きにくくなっている影響も考えられますが、それを加味しても心不全が治療難治性であることを示していると思います。
まとめますと、心不全は決して無縁でなく関わる可能性のある疾患であり、難治性で致死率の高い疾患であるということがわかって頂けたかと思います。
そんな心疾患の治療法はどのようなものがあるのでしょうか。次に治療法についてお話できたらと思います。
心不全治療で大切なのは①適切な薬物治療と通院、と②生活習慣改善がとても大切です。それぞれお話していきますね。
①適切な薬物療法と通院
心不全の治療には薬物療法はとても大切な治療です。心不全治療の歴史を紐解くと、まだ心不全の薬がなかった時代、心不全の1年後死亡率は50%と言われていました。心不全と言われたら、1年後に生きてる可能性は2人に1人しかいないことになります。これはめちゃくちゃ恐ろしい病気ですよね。その惨劇をなんとかしようと、歴代の医師達の努力の末、心不全の薬が1剤増えるごとに予後も数%ずつ良くなっていき、現在の1年後生存率20%前後まで改善してきたわけですね。ですから、心不全になると多くの薬を飲むこととなります。しかし、どれもあなたの心臓を守る大切な薬なんですね。なので、心不全と言われたら薬の飲み忘れはないよう飲み続けてくださいね。
また、心不全のタイプによってはペースメーカー手術、カテーテル手術などが有効なこともあります。これは専門医でしか判断は難しいと思うので、主治医か循環器の先生にご相談くださいね。
②生活習慣改善
あれだけ難治性で重篤な心不全なんですが、なんと生活習慣の改善で予後を改善、また予防もできると言われています。その生活習慣の改善には主に食事療法、運動療法、その他の生活習慣改善(禁煙、睡眠、感染予防など)などが大切になってきます。またこのように、生活習慣の改善から心不全の予後の改善を狙う治療を「心臓リハビリテーション」と呼ばれています。経済的で、心疾患の予後改善に大変効くことから日本全国で注目を浴びている治療法になります。
また、手前味噌にはなりますが僕、船戸 優佑の専門はこの心臓リハビリテーションであり、心臓リハビリテーション指導士の資格を所有、この領域の研究論文で医学博士になっております。興味がある方はお気軽にご相談頂ければ幸いです。
さて、本日は心不全について、身近であるにも関わらず、難治性であり致死率が高い恐ろしい疾患であること、それに対して、薬物療法と心臓リハビリテーションが重要なことをお話させて頂きました。
当院船戸クリニックでは、冒頭でも触れたように循環器外来が増え心疾患への治療体制を強化しております。また、心臓リハビリテーション施設「ココフィット」も完成し、心臓に効く運動療法のやり方、栄養指導、生活指導などを受けることも可能です。指導と聞くと厳しいイメージがあるかもしれませんが、厳しく指導することはありませんので、心配しないでくださいね。もし、胸の症状があって循環器受診してみたい、心臓リハビリテーションを受けてみたいという方は気軽に僕の外来でご相談頂ければ幸いです。
この通信を読んで、またそれが治療につながりあなたの人生がより豊かになればこれ以上幸せなことはありません。
あなたの今が、人生がより良いものになることを祈っております。
それでは、次回の通信でお会いしましょう。